真空管(SE用)の分類と特性測定
まだ使って(試験して)いない球もありますが、それらを含めて実機に使えそうな手持ちの球を整理してみました。
下表は、肩特性の大きさで分類しました。
肩特性: Ec=0VでのIp-Ep特性で、Ipが飽和する辺りのIp値とEsg値
*データシートの値(肩特性値Ec=0)、Ip-Ep特性図、等を参考にしました。
*肩特性は、Esg=100Vに正規化してあります。
*データシートの値(肩特性値Ec=0)、Ip-Ep特性図、等を参考にしました。
*肩特性は、Esg=100Vに正規化してあります。
(データがない場合は、Ip∝Esg^1.5で推定)
肩特性が同じ球を似た動作点で動かした場合、近い特性が得られると思います。但しプレート損失が異なれば、同じ動作点で動かす事は出来ませんし、gmが異なればゲインも同じにはなりません。
ここから定格オーバーを認める、全て自己責任の話です。
(但し定格通りに使って問題が発生しても、誰も補償・交換等してくれる訳ではありません。)
表中のプレート損失はデータシートによるものですが、眺めると少し不自然です。
MT9の6CW5が14Wであるのに、GT管でバルブもプレートも一回り以上大きい6BQ6が11W、25E5も10W。なので、規格とバルブ(とプレート)の大小を参考に、最大プレート損失を自己流で推定します。例えば35C5(4.5W)や30A5(7.5W)は、見た目同形の6AQ5が12Wなので、10~12W位いけるのでは、という具合です。6BQ6/25E5等々の球は、7591と同形(近似形)なので16~20W位いけそうです。
個別の判断基準として、試験中でのプレート温度Max値が200~210℃位になるあたりを限界(定格)にすればと思います。
プレート/スクリーン電圧の最大値は、アンプの製作では300V程度なので、全てOKとすることにします。
注意すべきは、本質的なプレート/スクリーングリッド損失、最大カソード電流です。
特にPsgは、SGが熱容量が小さいですからオーバーが少し持続しただけで赤熱状態になってしまうかもしれません。
標準5結での動作時が、Esg≫Epとなるので特に要注意です。3結やULの方が比較的安全だと思います。
管球でOTLアンプを製作する場合、Ip(Ik)のピーク値がかなり大きくなりがちで、定格オーバーの度合によってはカソード劣化(ひいては寿命)を早めることになるかもしれません。
私のアンプ製作ではUL接続アンプが基本なので、Ppと発熱具合を注意していれば良いかな、と思っています。
それで、分類の一番低位でユニバーサル機への出番が無さそうな球を、定格オーバーで試験してみました。
ステレオ入力を備えるノートPCは今後入手出来そうにないので、以前試験したUSB-DAC2台を利用した試験構成に変更しました。
単体(ループバック)ではベリンガー(Behringer)UFO202が一番特性が良かったのですが、それを試験の構成に組み込んで試したところ発振してしまい、結局SBとプリンストンPCA-HACUを使うことにしました。今回使ったPCはtype-AのUSB端子が2個なので、オシロは別のPCに接続して試験しました。
試験機の回路も少し変更しました。OPTは逆接続にして、UL端子が57%となるようにしました。
これからUL57を標準として、順次特性を測り直す事にします。
UL57では抵抗分圧しないで済むので、Esg=Epまで試験(動作点と)することができます。
6BQ5のグループは、肩特性が低過ぎるので省略します。
今までの調整と同様に全て2次歪打消しを施していますが、バラツキが大きいので数値は省略します。
≪35C5≫
Ep=200V、Esg=200V、Ec=-20V、Ip=40mA、RL=3.5K、UL=57%、NF=15dB、A(1KHz)=31.6dB、CL(1KHz)=3.1W
歪率特性と周波数特性(1KHz、1W)
≪30A5≫
Ep=220V、Esg=222V、Ec=-22.3V、Ip=48mA、RL=3.5K、UL=57%、NF=15dB、A(1KHz)=33.5dB、CL(1KHz)=4.8W
歪率特性と周波数特性(1KHz、1W)
≪8B8≫
Ep=230V、Esg=232V、Ec=-17.8V、Ip=41mA、RL=3.5K、UL=57%、NF=15dB、A(1KHz)=33.5dB、CL(1KHz)=3.5W
歪率特性と周波数特性(1KHz、1W)
≪15KY8A≫
Ep=240V、Esg=240V、Ec=-26V、Ip=52mA、RL=3.5K、UL=57%、NF=15dB、A(1KHz)=31.8dB、CL(1KHz)=5.6W
歪率特性と周波数特性(1KHz、1W)
30A5、やはりPp=10Wを超えても大丈夫そうで普通に使える特性になりました。MT7が出してる特性には見えない位です。
それに比べると、35C5と8B8は見劣りして、動作点の探索し甲斐がないようです。
15KY8A、管は太いですがプレートが小さいのでPpは定格値で一杯のようです。しかし動作点を選べば良い特性を出せる事が分かりました。専用機の再度の改修を検討してみたいと思います。
(注)試験の特性、使用球は概ね中古(仮に箱入りでも、未使用と云う確証を得る事は不可)なので、未使用(鮮度の良い)球なら異なる動作点で更に良好な特性を出せるかもしれません。鮮度の違いは、球の違い以上の差が出ることもあり得ます。
これは、今までの実機・試験を含めて今後全ての特性について言える事です。