プッシュプルアンプでの2次/3次歪打ち消し

(2018.1.10作成)
プッシュプルの出力段と差動増幅のドライバとで、3次歪の打ち消しが働いているのを確認しました。

ある条件(6CW5ULのPP:NFなし)での歪調整が出来てから、ドライバ(差動増幅)出力とOPT2次端子の歪率の関係を測定してみました。
上段は、入力が純正弦波1KHzでのドライバと出力端子での歪率、下段は入力に高次性(注1)3次高調波0.5%を加えた信号での各歪率です。

上段での3次歪は、出力端子<ドライバ出力となっており、下段ではドライバの3次歪が入力信号によって打ち消され、出力端子にはPP出力段本来の3次歪が出ています。
これは以前考察したとおり6CW5が高次性(>2次)特性で動作しており、差動増幅の低次性(注1)3次歪が6CW5の高次性3次歪を打ち消していることになります。


また差動増幅とPPの考察(以前の記事「差動アンプの考察と評価」)で書いたように、差動増幅をアンバランス動作させると度合いに応じて2次歪を増減させることができ、3次歪と同時に2次歪の打ち消しを行うことができます。ただ高利得の差動増幅で広帯域をフラットにするのは難しく、オーディオ帯域内で差が出てしまいます。ゆえに帯域によって打消しの最適な加減が異なるので、低域(または高域)を目標に調整すると高域(または低域)が歪大となるので、全体のバランスを見ながら調整する必要があります。
実際の加減は、3次歪は差動回路の定電流を小さく(バイアスを深く)すれば大きくなり、2次歪はバランス調整で増減させることができます。
(注)2次歪補正については、出力段との打ち消しか、ドライバ段自身のアンバランスを矯正できたことにによるものか、検証できてはいません。取敢えずは最終的な(出力での)歪が低減できれば良しとしています。
PP出力段の調整ができてから最後に差動増幅での打ち消し調整を行えば、かなり歪率特性を向上させることができます。
10GK6と6DW5を再調整してみました。
プッシュプルの実験機はOPTをOPT-35Pに交換、差動増幅のバランス(エミッタVR)は100Ωのみ(68Ωは削除)としました。

(1)10GK6(5結)
Ep=305V
Ik=32mA
Esg=304/277V
Ec=-12.0/11.1V
RL=5K
UL0%(5結)
ヒーター2本直列で、6Vと15VACアダプター直列を使用

NF10dB(差動TrEc≒24/64V)での歪率特性と周波数特性(1W)
A(1KHz、1W)=43.1dB
CL(1KHz)=13.5W





(2)10GK6(UL50%)
Ep=300
Ik=39mA
Esg=300V
Ec=-11.0/11.9V
RL=5K
UL50%(SGタップ)
ヒーター2本直列で、6Vと15VACアダプター直列を使用

NF10dB(差動TrEc≒99/128V)での歪率特性と周波数特性(1W)
A(1KHz、1W)=39.0dB
CL(1KHz)=8.1W





(3)6DW5(UL50%)
Ep=270
Ik=35mA
Esg=170V
Ec=-31.6/32.5V
RL=5K
UL50%(SGタップ)
ヒーター2本直列で、12VACアダプターを使用

NF10dB(差動TrEc≒106/108V)での歪率特性と周波数特性(1W)
A(1KHz、1W)=30.9dB
CL(1KHz)=13.0W





(4)6DW5(UL33%)
Ep=270
Ik=36mA
Esg=185V
Ec=-34.9/35.4V
RL=5K
UL33%(抵抗分圧)
ヒーター2本直列で、12VACアダプターを使用

NF10dB(差動TrEc≒91/96V)での歪率特性と周波数特性(1W)
A(1KHz、1W)=31.9dB
CL(1KHz)=16.0W





十分満足な結果となりました。

シングルアンプではPPに比べてRLが高いですが高gm球なら高次性動作となっているかもしれません。今まで2次歪の事だけ考えていましたが、今度シングルの実験をする際には3次歪の具合を確認してみます。シングルアンプの歪打ち消しに差動増幅ドライバが使えるかどうか微妙ですが、旨くすれば3次歪も打ち消しできるので、検討・実験の価値はありそうです。

(注1)高次性、低次性: 過去記事「歪の考察(その2): 歪の打消し」を参照。