初戦負け
(2014.2.12作成)
実験回路が完成して、まずは真空管(42)を動かしてみました。
うぉーーー(と叫びたいくらい)、云十年の眠りから目覚めて動く姿(大袈裟にいえば太古の遺跡物が呪文によって目覚めた様な)、なんと感動的か。と感傷に浸っておれたのも束の間の事。SW電源とゲインの大きいアナログアンプの混在セットは、素人の私には敷居がかなり高かったようで、ノイズが高くオーディオ装置としては役に立たない物が出来上がってました。せまい基板にまとめて組んだので、改造(修正)する余地もなく(そもそも設計がまずかったのかな?)、実験第1段は7割方失敗という結果になりました。それでも、簡単な動作テストができるものを手にしたというのも大きい事かな、と自分を慰めています。次はもっと基本形からやり直します。
悔し紛れに、数値計算で真空管の特性を単純関数で近似して、歪率を考察してみました。
(注)以下、数学・オーディオの素人の計算なので、誤りがあってもご容赦下さい。
まずは3極管と5極管の違い、良く言われる2次高調波と3次高調波の大小の真偽を検討します。
昔、高名なオーディオ製作・著作者の記述に、「3極管歪は2次高調波で代表され、5極管は3次で代表される」、という主旨の記述を見た記憶があります。高校で習った教科書にはこんな図が載っていました。
同様に3極管のIpとEgに関して次の様な関係式が載っていました。
Ip = G (Eg + Ep/μ)1.5
物理的な原理から導かれたらしいです。公開されてる真空管の特性図(Ip-Eg特性)を眺めると、みな2次関数のようなカーブを描いていて、3極管、5極管や上記式との違いがピンときません。いくつかをプロットして、Excelに転記してグラフ化してみると、
3極管 Ip ∝ Eg1.8
5極管 Ip ∝ Eg2.2
に比較的近かったです。中には、Egの3乗曲線となっている3極管やビーム管もありましたが。よって、負荷抵抗ゼロの場合は、<Ip∝Egn>を特性曲線と仮定できそうです。教科書の式は、電極間距離に比べて十分大きな電極面積と一様な電極形状を有するなど、一般の真空管とは大分異なる条件でのみ当てはまる関係式と考えることにしましょう。では実際の特性図から読み取れた結果として、概ね3極管が2次より低くて5極管が2次より高いということで、何か違いが出るのでしょうか???
次に負荷抵抗がある場合はどうなるかを考えます。
5極管で負荷がある場合、肩電圧以下の領域ではIp-Eg曲線の頭がつぶれて歪増加となりそうなのは、理解できます。曲線も複雑になりそうなので、肩電圧にかからない低負荷抵抗の範囲を考えます(通常採用されませんがOTLの場合もあるので、全く無意味な事ではないかと。まぁOTLはPPですが)。さらに内部抵抗(rp)が非常に大きいと仮定すれば、Ip-Ep特性は平行線になり、Ip-Eg特性は概ね負荷抵抗に無関係となります。
3極管の場合、グリッド電流が流れ易いとのことなので、特性上はつぶれがなくてもドライブの仕方によっては5極管同様の歪(3次?)増加が考えられます。一応そこは考慮されてる前提で先に進みます。負荷抵抗が大きくなる(Ip⇒0)と、先の教科書の関係式(この場だけ引用させてもらいます^^;)から<Ip∝Eg>に近づいていきますので、負荷抵抗に応じて<Ip∝Eg1.1~1.8>になると考えられます(正確には単純な関数とはならないと思いますが)。
いろいろ仮定・限定を入れ込みましたが、負荷抵抗がある場合のIp-Eg特性も<Ip∝Egn>と近似できるものと結論します。一応5極管は2次を超える関数特性で変わらず、3極管はより低次の関数になると区分できました。
ではまず5極管を想定して、関数も単純化して
y+1 = (x+1)2.2
をIp-Eg特性曲線として、動作点(0,0)、振幅±0.5の正弦波入力で、歪を計算すると、次の様になりました
3次高調波歪は思いのほか少なく、使い方によっては5極管も悪くない感じです。PPにすれば、理論的には2次歪がゼロになる訳ですし。次いで、2乗と1.8乗(3極管を想定)の特性で同様に計算してみました。
2乗特性で3次歪がゼロになるとは驚きです。PPにしたらゼロ歪のアンプが出来ることに...。
1.8乗(3極管)の場合も曲率が小さい分だけ歪も小さくなったに過ぎないという感じです。次数が低くなっても、同様の傾向を示すと思われます。
結論としては、3極管、5極管の歪の差は、5極管のロードラインに肩電圧より低い領域が利用されて顕著になる歪の差だった、裏を返せば本質的な差はないと理解しました。
PPといえば、差動増幅(差動にPPを付けると意味不明になるような気がします)が昨今の流行?なのでしょうか。採用された製作例が多く見受けられます。教科書には確か、差動増幅は「…ドリフトを低減する為の方式…」と、PPは「…シングルの歪低減の方式…」として紹介されていました。差動増幅は、定電流で動作点が縛られていますので、入力の振幅に応じて常に歪の多い方(カットオフの方向)へ動作点がシフトしながら増幅動作が行われます。低ドリフトが求められる分野は概ね扱う信号が微小なので、歪特性は余り問題となりませんが、電力増幅の様な大振幅信号を扱う用途では、その特徴が顕著に表れて歪特性が良くない気がしてました。それで、PPと差動増幅の入出力の直線性を計算してみました。1.8乗曲線と2.2乗曲線での結果です。(特性曲線グラフは第1象限に移動しました。)
差動増幅はPPに比べると大分悪いです。PPは2乗未満の曲線のとき、直線の下側に湾曲し、2乗曲線で直線と一致(つまり歪ゼロ)します。2乗を超える曲線では直線の上側へ湾曲していきます。差動の場合は全て下側に湾曲してます。5極管?だけ上向きになっているということになりそうですが、直線性の湾曲の向きが音と関係あるのでしょうか...?。
では、無信号動作点(1,1)で振幅±0.4正弦波入力の場合の、次数毎の歪を計算してみます。特性曲線の次数毎の、A1シングル(2次歪)、A1シングルとA1PP(3次歪)、差動(Diff)増幅(3次歪)それぞれの値です。
ついでに、5極管主体で検討していくつもりなので、2.2乗曲線での入力に対する歪を同様に計算してみました。
以上で、歪に関しては5極管の悪評?は払拭でき、使い方によっては良い結果が得られると、自分個人としては納得できました。
ではローノイズ化を目指して、再出発、健闘していきます。
疲れ休めに、実験機で高調波歪率(2thと3thだけ)の測定などして、上記の検証ができたらやってみようかと思います。
実験回路が完成して、まずは真空管(42)を動かしてみました。
うぉーーー(と叫びたいくらい)、云十年の眠りから目覚めて動く姿(大袈裟にいえば太古の遺跡物が呪文によって目覚めた様な)、なんと感動的か。と感傷に浸っておれたのも束の間の事。SW電源とゲインの大きいアナログアンプの混在セットは、素人の私には敷居がかなり高かったようで、ノイズが高くオーディオ装置としては役に立たない物が出来上がってました。せまい基板にまとめて組んだので、改造(修正)する余地もなく(そもそも設計がまずかったのかな?)、実験第1段は7割方失敗という結果になりました。それでも、簡単な動作テストができるものを手にしたというのも大きい事かな、と自分を慰めています。次はもっと基本形からやり直します。
悔し紛れに、数値計算で真空管の特性を単純関数で近似して、歪率を考察してみました。
(注)以下、数学・オーディオの素人の計算なので、誤りがあってもご容赦下さい。
まずは3極管と5極管の違い、良く言われる2次高調波と3次高調波の大小の真偽を検討します。
昔、高名なオーディオ製作・著作者の記述に、「3極管歪は2次高調波で代表され、5極管は3次で代表される」、という主旨の記述を見た記憶があります。高校で習った教科書にはこんな図が載っていました。
同様に3極管のIpとEgに関して次の様な関係式が載っていました。
Ip = G (Eg + Ep/μ)1.5
物理的な原理から導かれたらしいです。公開されてる真空管の特性図(Ip-Eg特性)を眺めると、みな2次関数のようなカーブを描いていて、3極管、5極管や上記式との違いがピンときません。いくつかをプロットして、Excelに転記してグラフ化してみると、
3極管 Ip ∝ Eg1.8
5極管 Ip ∝ Eg2.2
に比較的近かったです。中には、Egの3乗曲線となっている3極管やビーム管もありましたが。よって、負荷抵抗ゼロの場合は、<Ip∝Egn>を特性曲線と仮定できそうです。教科書の式は、電極間距離に比べて十分大きな電極面積と一様な電極形状を有するなど、一般の真空管とは大分異なる条件でのみ当てはまる関係式と考えることにしましょう。では実際の特性図から読み取れた結果として、概ね3極管が2次より低くて5極管が2次より高いということで、何か違いが出るのでしょうか???
次に負荷抵抗がある場合はどうなるかを考えます。
5極管で負荷がある場合、肩電圧以下の領域ではIp-Eg曲線の頭がつぶれて歪増加となりそうなのは、理解できます。曲線も複雑になりそうなので、肩電圧にかからない低負荷抵抗の範囲を考えます(通常採用されませんがOTLの場合もあるので、全く無意味な事ではないかと。まぁOTLはPPですが)。さらに内部抵抗(rp)が非常に大きいと仮定すれば、Ip-Ep特性は平行線になり、Ip-Eg特性は概ね負荷抵抗に無関係となります。
3極管の場合、グリッド電流が流れ易いとのことなので、特性上はつぶれがなくてもドライブの仕方によっては5極管同様の歪(3次?)増加が考えられます。一応そこは考慮されてる前提で先に進みます。負荷抵抗が大きくなる(Ip⇒0)と、先の教科書の関係式(この場だけ引用させてもらいます^^;)から<Ip∝Eg>に近づいていきますので、負荷抵抗に応じて<Ip∝Eg1.1~1.8>になると考えられます(正確には単純な関数とはならないと思いますが)。
いろいろ仮定・限定を入れ込みましたが、負荷抵抗がある場合のIp-Eg特性も<Ip∝Egn>と近似できるものと結論します。一応5極管は2次を超える関数特性で変わらず、3極管はより低次の関数になると区分できました。
ではまず5極管を想定して、関数も単純化して
y+1 = (x+1)2.2
をIp-Eg特性曲線として、動作点(0,0)、振幅±0.5の正弦波入力で、歪を計算すると、次の様になりました
3次高調波歪は思いのほか少なく、使い方によっては5極管も悪くない感じです。PPにすれば、理論的には2次歪がゼロになる訳ですし。次いで、2乗と1.8乗(3極管を想定)の特性で同様に計算してみました。
2乗特性で3次歪がゼロになるとは驚きです。PPにしたらゼロ歪のアンプが出来ることに...。
1.8乗(3極管)の場合も曲率が小さい分だけ歪も小さくなったに過ぎないという感じです。次数が低くなっても、同様の傾向を示すと思われます。
結論としては、3極管、5極管の歪の差は、5極管のロードラインに肩電圧より低い領域が利用されて顕著になる歪の差だった、裏を返せば本質的な差はないと理解しました。
PPといえば、差動増幅(差動にPPを付けると意味不明になるような気がします)が昨今の流行?なのでしょうか。採用された製作例が多く見受けられます。教科書には確か、差動増幅は「…ドリフトを低減する為の方式…」と、PPは「…シングルの歪低減の方式…」として紹介されていました。差動増幅は、定電流で動作点が縛られていますので、入力の振幅に応じて常に歪の多い方(カットオフの方向)へ動作点がシフトしながら増幅動作が行われます。低ドリフトが求められる分野は概ね扱う信号が微小なので、歪特性は余り問題となりませんが、電力増幅の様な大振幅信号を扱う用途では、その特徴が顕著に表れて歪特性が良くない気がしてました。それで、PPと差動増幅の入出力の直線性を計算してみました。1.8乗曲線と2.2乗曲線での結果です。(特性曲線グラフは第1象限に移動しました。)
差動増幅はPPに比べると大分悪いです。PPは2乗未満の曲線のとき、直線の下側に湾曲し、2乗曲線で直線と一致(つまり歪ゼロ)します。2乗を超える曲線では直線の上側へ湾曲していきます。差動の場合は全て下側に湾曲してます。5極管?だけ上向きになっているということになりそうですが、直線性の湾曲の向きが音と関係あるのでしょうか...?。
では、無信号動作点(1,1)で振幅±0.4正弦波入力の場合の、次数毎の歪を計算してみます。特性曲線の次数毎の、A1シングル(2次歪)、A1シングルとA1PP(3次歪)、差動(Diff)増幅(3次歪)それぞれの値です。
ついでに、5極管主体で検討していくつもりなので、2.2乗曲線での入力に対する歪を同様に計算してみました。
以上で、歪に関しては5極管の悪評?は払拭でき、使い方によっては良い結果が得られると、自分個人としては納得できました。
ではローノイズ化を目指して、再出発、健闘していきます。
疲れ休めに、実験機で高調波歪率(2thと3thだけ)の測定などして、上記の検証ができたらやってみようかと思います。





