乗り物のスピードコントロールと自動運転(雑感)

(2015.11.15作成)
NHKマサカメTV(11/14)を見ました。タクシーの意外な話題について、あれやこれや。
その中で、”乗客の要望を叶えたタクシー会社が売り上げアップした”という話題、それは高級ハイヤーの様な乗り心地の良い運転の提供というものでした。

乗り心地の良いとは、つまり加速・減速・カーブでの体にかかる力を抑えた運転ということです。乗り心地という観点で経験上から思い返してみると、乗り合いバスに立って乗車するのが一番悪いです。次いで電車での立ち乗車、一番良いのはエレベーターでしょうか。エレベーターを除いて、座席に座った乗車なら大分楽な感じになります。
その乗り心地を変えるのは何か?、先ず加速度という言葉をよく聞きます。確かに乗り物が加速すると、後ろ方向へ倒れるような力を体に受けます。加速度が大きいと、この力も大きくなります。でもそれより乗り心地を左右するのが、あまり聞き馴染みがないと思いますが、加加速度(ジャーク:加速度の変化率)です。

速度   : m/s
加速度  : m/s2 (速度/s ≒ 力)
加加速度 : m/s3 (加速度/s ≒ 力/s

乗り物での感覚に置き換えると、正確な表現ではありませんが進行方向への正の加速度は後ろへ押される力の大きさ、加加速度はその力の変化率になります。力が大きくても変化が少しずつであれば踏ん張れますが、急(変化率が大)に力がかかるとよろけてしまいます。では実際のスピードコントロールをどうすればいいのか、グラフで考えてみます。

乗り心地の良い運転例、最大加速度を0.6m/s2、最大加加速度を0.4m/s3に抑えて、ゼロから2m/sの速度へ加速した場合の夫々の値の様子です。加速度(赤線)が体にかかる力の大きさと考えてもいいです。その変化が徐々になるように加加速度を抑えていますので、体を踏ん張る余裕があります(気持ちの準備ができます)。加加速度をもっと小さくすれば体が感じない(認識できない)うちに所定(2m/s)の速度なっていた、ということもあり得ます。

≪乗り心地の良い運転例≫

停止する場合は、速度と加加速度に関してはこのグラフを左右で裏返した図を想像してもらえば良いと思います。加速度は減速(負の加速度)になりますので、X軸で上下裏返したグラフになります。でも乗り心地の考えは同じです。

次は乗り心地の悪い運転例、最大加速度は0.6m/s2と同じですが、最大加加速度を2m/s3と大きく設定して、ゼロから2m/sの速度へ加速した場合です。加速度(赤線:=体にかかる力)はいきなりガツンとくる感じになります。そうすると踏ん張りの準備をする余裕がなく、力のかかる方向へよろけてしまいます。所定速度になったときに、加速度が不意にゼロになりますから踏ん張りの力がすっぽ抜けて今度は前(先ほどとは反対)によろけてしまうでしょう。

≪乗り心地の悪い運転例≫

≪乗り心地の極めて良い運転例≫

速度2m/sとは随分遅いと思われますが、10階程度のビルに設置されたエレベーターの最高速度は概ねこの程度です
台湾の台北市に設置された日本製の超高速エレベーター(1010m/分≒16.8m/s)でも加速度と加加速度を大きくすることはできませ。バス・電車のような水平運転と違って、骨の支えも有り踏ん張りがしやすいですが、加速度、加加速度は夫々0.8m/s2、0.8m/s3程度が限度であると聞いた事があります。また人が乗らない荷物用エレベーターでも、食堂などに設置された配膳運搬用では料理が崩れないように制限値を低めに設定しているでしょう。水平方向に動く乗り物では制限をさらに低くしないと転んでしまいます。エレベーターでも斜行(斜めに上昇下降する)というタイプがあります。実物を見た事は無いですが長崎に長い行程の斜行エレベーターがあるとか。関東でも神奈川の上星川駅の傍に斜行エレベーターがあるのを見たことがあります。斜行ですから水平方向の速度成分がありますので、上昇下降の一般エレベーターより加速度、加加速度を抑えてあるでしょう、多分。

昨今、自動車の自動運転が総理大臣の一言でニュースなどに度々取り上げられるようになりましたが、当然自動車でも乗り心地の良い速度制御が組み込まれるはずです。
しかしそれ以前に、何故電車の速度制御が未だに人頼みなのか良く分かりません。勿論線路上(進行方向)の異物に接触するおそれがある場合に緊急停止しなければいけないでしょう。でもそれ以外の殆ど(赤信号での停止や通常のホーム停車)の場合は電子制御で運転できるでしょう。まさか運転手に満足度を与える為に手動運転を残しているという事ではないと思いますが。エレベーターで乗り心地が悪いなんて余り聞きません。そしてお安いエレベーターでも概ね停止階でピタッ(±1mm以内位)と停止します。2m/sのエレベーターの場合1/2000の精度です。電車がホームに時速60km(16.7m/s)で進入して1/2000の精度で止まれば±8mm位で止まれる計算になりますので、ホームドアがあっても多分問題ないでしょう。電子(電気)設備費で比べたら、エレベーター≪電車 でしょうから、エレベーターで出来てるくらいの制御を、自動運転自動車が実現する前にぜひともやって欲しいですね。それとも鉄道事業、車両製造が新規参入のない独占的事業なので駄目なのかな?余談ですが、乗り心地が良くなると加速度・加加速度の揺らぎが無くなる訳で、反って気持ちよくウトウト状態になりにくくなるかも。電車の揺れは、線路の歪みやポイント・カーブ通過での横方向の加速度などもあるので、吊革は必要ですね。

自動車の自動運転のソフトウェア、自動車メーカー各社?が今必死で開発に取り組んでいることでしょう。Googleも開発してるようですから、他のソフトウェア専門の企業もこっそり開発してるかもしれません。自動車メーカーが遅れをとれば、ボディだけトヨタや日産で頭(制御)がGoogle製の自動車なんてことになり、日本の自動車メーカーも下請け企業とまでは言えなくてもPCにおける関係(PCハードメーカーとマイクロソフト)のようになってしまうかもしれません。
こんな状況、過去から続いてます。私が社会人なりたての頃、コンピューターは大型(部屋一杯の大きさ)が主流でアメリカのIBM社が圧倒的シェアを握り、日本に上陸。コンピューターの箱(ハード)は日本製でもOS(頭脳)はアメリカ製となってしまいました。PCでもNEC製が一時は日本のシェアを握っていましたが、結局OSもPCの仕様(作りの基本形)もアメリカ製一色となってしまいました。携帯電話の時代でも国内ではまだ良かったですが、スマホになって共通OSに食われてしまいました。

では自動車はどうなるでしょう。具体的にどんな開発をしているにかは分かりませんが、まずは単独自動運転を目指しているはずです。しかし人の運転を考えるとコミュニケーション(ネゴシエーション)が欠かせないと思います。人はお互いの様子(視認の有無、手振りなど)で出会い時の譲り合いをします。自動運転もそれが出来ないと、信号のない場所(駐車場の出入口、裏道の交差点など)での出会いで、お互いに安全確認し合って固まってしまう可能性があります。更に多様なコミュニケーションをとるためには、ここでも共通OSを搭載するのが便利で早道です。すると現在自動車メーカーが開発してるソフトは、重要ではあるものの、その共通OSのデバイスドライバという位置取りに堕ちてしまうでしょう。OSの提案、自動車の大企業を抱える日本(人)に是非頑張ってもらいたいです。企業連合でもいいですが日本の役所などが絡むと、レビューと修正の繰り返しで時間ばかりかかり、なかなか仕様決定に至らず外国に先を越されてしまいます。小数精鋭の頭の良い人たちでたたき台を作ってネットに公開し、世界からの賛同を得てからブラッシュアップしていけばいいでしょう。歴史に日本製OSを残せるチャンスじゃないでしょうか。

自動運転自動車、最終的には免許不要で乗車(操作?)出来ることになるでしょうから、免許関係の事業は徐々に縮退し、タクシー業界なども様変わりするでしょう。
免許を取れない高齢者なども車を所有できるようになるので、車の販売台数が増加するかもしれません。逆に自動運転車では運転操作(ドライブ)の楽しみが無くなるので自分の車を所有する人が減ってカーシェアが普及、結果として車の販売台数が減少するかもしれません。メーカーでは馬力の大小などでランク分けして車を作る意味もなくなるでしょう。

話が一寸脱線してしまいましたが、戻って自動運転自動車になれば、先のタクシーさんが提供するような大人しい乗り心地の良い運転や、乗り心地は多少悪い(急加減速)けど目的地に早めに到着する運転を、メニューで選べるようになるんでしょう、ですよね?車メーカーさん。