シングルアンプの調整(6CW5の歪率特性)
(2016.11.8作成)
以前の実験では、経験値が低く実験回路にも問題有りで、現在とは違う方向を向いた結論を出しているので、ここで改めて整理してみました。
アンプの製作、一般的にはまず使用球とPPとかSEなど構成を決める基本構想段階、特性情報をもとに動作点と動作状態を想定する設計段階、それに従って回路を決めて作る製作段階、出来上がった回路を設計に近い動作状態に持っていく調整段階、そして各種特性を測定して完成という順序になると思います。
私の場合は、
基本構成: 使う球は手持ちの中古か補充のしやすい廉価球で、標準的なPPかSE構成(ただしドライバはTr)
設計: 何度かコメントしている通り、特性図は全然参考にならないので、設計という段階はなし
製作: ユニバーサル志向であらかじめ1種類を製作
調整: 必要な特性が得られる動作点をカット&トライで探すこと
つまり調整がアンプ作りの主要な作業になります。
≪必要な特性≫
(a)出力について、以前は出力3~4Wとしていましたが1W位でも十分そうだと判明しましたので、目標は1W以上に改めます。電力増幅管とされてる球で1Wが出ないような球は(多分)無いので、出力に関しては全部が候補球になったということです。
(b)そうなると最も重要な特性はやはり歪率特性です。歪率の認識限界は聴く音楽の種類(ジプシー・キングスか、ペルトのアカペラ合唱曲か、など)で変わってくるでしょう。[単音(純音)+歪]を聞き比べると、私の場合1%以下では判別が難しいと感じたので、1W以下で歪1%以下を特性の目標とします。高調波の聴こえる可聴帯域の全域でということです。今までの実験を見ると、超低域では球の内部抵抗/負荷抵抗などの関係で目標に届かない(二軍やピンチヒッター止まりの)球が色々ありそうです。
(c)DFについては、いろいろな考えがあると思いますが、以前に行った実験から見えたのは、DFが小さい場合にスピーカーの周波数特性への影響だけでした。制動力(と駆動力?)については、自分で使うSPでは殆ど差が無さそうなので、NFを使用するアンプでは特に目標値を設定する必要はないでしょう。
(d)他に必要な性能は何かあるでしょうか?それについてはDTMの音作りが参考になります。
DTMでオリジナルの、あるいは既存の音源(楽器などの)の音を作る場合、大きいポイントは、音色(基本周波数と時間的変化を含む高調波成分のバランス)と音量変化(代表的にはAttack、Decay、Sustain、Releaseで識別される)の2種類です。
音色の同一性を保証するのは、勿論歪率特性です。
音量(振幅)変化の追随性を表す特性とはなんでしょうか(オペアンプのスルーレートが近縁の特性値と言えるかも)?これは過渡特性の範疇なので、定量化して評価するのは難しそうです。アンプの性能として製品で表記されたり、自作機で評価してるのも見たことはありません。暗黙に問題にならないとみなされてるのでしょうか?直観的には電源レギュレーションが影響しそうな感じです。バースト信号をオシロで見れば、その差がある程度判別できるかもしれません。オーディオ雑誌を見なくなって久しいですが、アンプ作りを夢見ていた遥か昔に見ていたアンプ製作記事では、たまにバースト信号の結果が載っていたことを思い出します。昨今のアンプ製作記事、バースト信号の観測結果を載せてるのでしょうか?電源レギュレーションの影響を減らすとしたら、(a)余裕のあるPTを使う、(b)定電圧化する、(c)終段を差動増幅にする、などが思い浮かぶ対策となります。この辺りの関係が差動アンプの好評価の理由かもしれません。これについては、いつか実験で追及してみたいと思っています。
ということで当面は歪率特性だけに注目します。最低限ここを押さえておかないと、音の変わるアンプになってしまいます。以下、まずはシングルアンプに話を限定します。
≪歪率特性≫
以前仕切り直しの実験を行った頃は、はなから5極管の歪は3次歪が主体であり、2次歪打ち消しという技?も頭になかったので、SG帰還(ウルトラリニア)で歪が顕著に改善されなければ通常のNFをかけるだけだと、思い込みがありました。3次歪が主体というのは昔からアンプ製作の一般常識?でした。私のバイブル本にもその様に書かれており、シングルアンプではウルトラリニア動作を使う意味はないとも断じられてました。でも実際は常識が間違っていて、5極管でも2次歪が主体の場合があり、ウルトラリニアや簡単な仕掛けでの2次歪打ち消しを行う価値はあったのです。
仕切り直し実験(失敗)を再測定する意味も含めて、動作点を探すための参考データとなるように、5極管での歪特性の傾向を測定してみました。実験には以前と同様6CW5を使いました。
ロードラインとIp-Ep特性との交わり方において、(i)肩よりEpが高い(Ipが水平になる)部分で交差する、(ii)丁度肩付近で交差する、(iii)肩よりEpが低い(Ipの立上がり)部分で交差する、夫々の特性を比較してみました。
そのイメージをグラフにすると下図のようになります。左が(i)、中央が(ii)、右が(iii)です。
スケールは適当に正規化してあります。
交差具合はグラフのように、Ep、Ip、RLを固定にしてEsgで調整しました。
Ep=245V
Ik=57mA
RL=3.5KΩ (計算上の適正RLは 245/53=4.6KΩ)
(i) Ec=-6.7V、 Esg=120V
(ii) Ec=-9.3V、 Esg=140V
(iii) Ec=-11.3V、 Esg=160V
これらが実際にイメージ図のようになっているかどうかは分かりませんが、前後の特性変動から推定しました。
標準5結(UL0%)の歪率特性(1KHz)に加えて、UL10%、20%、30%、40%での特性を測定しました。
(注)出力(W)の測定値(計算?)に誤りがありました(2割以上高めになっていたようです)。
なかなか興味深い結果になりました。内部抵抗の変化をのぞけば、予想どおり5結(UL0%)での(i)タイプは3次歪が小さいです。またUL度を上げると、Ipの立上がりが段々寝ていくので、Esgを変えてRLとの交差具合を変えるのと同等の効果(UL↑ ≒ Esg↓)になっているのが、良くわかります。
UL0%:Esg120V、UL20%:Esg140V、UL30%:Esg160V、が大体似た特性になっていて、これはEpとIpと球その物の特性から決まってしまうのかもしれません(限界?)。
2次歪打消しの実験では計算上の適正値より低めのRLが良いと思って試験しましたので、それを確認してみました。
イメージ図で表すと次のようになります。
Ep=270V
Ik=50mA
RL=3.5KΩ (計算上の適正RLは 270/46=5.9KΩ)
(i) Ec=-7.5V、 Esg=120V
(ii) Ec=-9.7V、 Esg=140V
(iii) Ec=-12.1V、 Esg=160V
こちらも標準5結(UL0%)の歪率特性(1KHz)に加えて、UL10%、20%、30%、40%での特性を測定しました。
(注)出力(W)の測定値(計算?)に誤りがありました(2割以上高めになっていたようです)。
Esg=120V:UL40%は出力が小さくなったので省力しました。適正RLに比べると確かにCL出力は若干多めですが、同時に2次歪がそれ以上に多めです。
なので、比較する限り適正RLよりやや低め程度のRLが良いようです。
他の5極管でも歪率と出力の大きさに差はあるものの、この傾向は同じと考えられます。
後はその時の気分(好み)で、マップ(傾向)の中から最大出力と歪率特性のパターンを選び、2次歪打消しを適度に掛けて仕上げれば調整完了です。
念のため、ドライバTrについても出力20Vp-pの場合の歪率を簡単に測ってみました。
3次歪は、そこそこ小さいので問題ないようです。Trよりゲインは低くなりますが、5極管(例えば6CW5)でもULとEsgの選択次第で2次歪打消し用のドライバとして使えそうです。バイアス(C電源)が共通に使えるので、Trを使うより全体の回路がシンプルになり、検討する価値がありそうです。
以前の実験では、経験値が低く実験回路にも問題有りで、現在とは違う方向を向いた結論を出しているので、ここで改めて整理してみました。
アンプの製作、一般的にはまず使用球とPPとかSEなど構成を決める基本構想段階、特性情報をもとに動作点と動作状態を想定する設計段階、それに従って回路を決めて作る製作段階、出来上がった回路を設計に近い動作状態に持っていく調整段階、そして各種特性を測定して完成という順序になると思います。
私の場合は、
基本構成: 使う球は手持ちの中古か補充のしやすい廉価球で、標準的なPPかSE構成(ただしドライバはTr)
設計: 何度かコメントしている通り、特性図は全然参考にならないので、設計という段階はなし
製作: ユニバーサル志向であらかじめ1種類を製作
調整: 必要な特性が得られる動作点をカット&トライで探すこと
つまり調整がアンプ作りの主要な作業になります。
≪必要な特性≫
(a)出力について、以前は出力3~4Wとしていましたが1W位でも十分そうだと判明しましたので、目標は1W以上に改めます。電力増幅管とされてる球で1Wが出ないような球は(多分)無いので、出力に関しては全部が候補球になったということです。
(b)そうなると最も重要な特性はやはり歪率特性です。歪率の認識限界は聴く音楽の種類(ジプシー・キングスか、ペルトのアカペラ合唱曲か、など)で変わってくるでしょう。[単音(純音)+歪]を聞き比べると、私の場合1%以下では判別が難しいと感じたので、1W以下で歪1%以下を特性の目標とします。高調波の聴こえる可聴帯域の全域でということです。今までの実験を見ると、超低域では球の内部抵抗/負荷抵抗などの関係で目標に届かない(二軍やピンチヒッター止まりの)球が色々ありそうです。
(c)DFについては、いろいろな考えがあると思いますが、以前に行った実験から見えたのは、DFが小さい場合にスピーカーの周波数特性への影響だけでした。制動力(と駆動力?)については、自分で使うSPでは殆ど差が無さそうなので、NFを使用するアンプでは特に目標値を設定する必要はないでしょう。
(d)他に必要な性能は何かあるでしょうか?それについてはDTMの音作りが参考になります。
DTMでオリジナルの、あるいは既存の音源(楽器などの)の音を作る場合、大きいポイントは、音色(基本周波数と時間的変化を含む高調波成分のバランス)と音量変化(代表的にはAttack、Decay、Sustain、Releaseで識別される)の2種類です。
音色の同一性を保証するのは、勿論歪率特性です。
音量(振幅)変化の追随性を表す特性とはなんでしょうか(オペアンプのスルーレートが近縁の特性値と言えるかも)?これは過渡特性の範疇なので、定量化して評価するのは難しそうです。アンプの性能として製品で表記されたり、自作機で評価してるのも見たことはありません。暗黙に問題にならないとみなされてるのでしょうか?直観的には電源レギュレーションが影響しそうな感じです。バースト信号をオシロで見れば、その差がある程度判別できるかもしれません。オーディオ雑誌を見なくなって久しいですが、アンプ作りを夢見ていた遥か昔に見ていたアンプ製作記事では、たまにバースト信号の結果が載っていたことを思い出します。昨今のアンプ製作記事、バースト信号の観測結果を載せてるのでしょうか?電源レギュレーションの影響を減らすとしたら、(a)余裕のあるPTを使う、(b)定電圧化する、(c)終段を差動増幅にする、などが思い浮かぶ対策となります。この辺りの関係が差動アンプの好評価の理由かもしれません。これについては、いつか実験で追及してみたいと思っています。
ということで当面は歪率特性だけに注目します。最低限ここを押さえておかないと、音の変わるアンプになってしまいます。以下、まずはシングルアンプに話を限定します。
≪歪率特性≫
以前仕切り直しの実験を行った頃は、はなから5極管の歪は3次歪が主体であり、2次歪打ち消しという技?も頭になかったので、SG帰還(ウルトラリニア)で歪が顕著に改善されなければ通常のNFをかけるだけだと、思い込みがありました。3次歪が主体というのは昔からアンプ製作の一般常識?でした。私のバイブル本にもその様に書かれており、シングルアンプではウルトラリニア動作を使う意味はないとも断じられてました。でも実際は常識が間違っていて、5極管でも2次歪が主体の場合があり、ウルトラリニアや簡単な仕掛けでの2次歪打ち消しを行う価値はあったのです。
仕切り直し実験(失敗)を再測定する意味も含めて、動作点を探すための参考データとなるように、5極管での歪特性の傾向を測定してみました。実験には以前と同様6CW5を使いました。
ロードラインとIp-Ep特性との交わり方において、(i)肩よりEpが高い(Ipが水平になる)部分で交差する、(ii)丁度肩付近で交差する、(iii)肩よりEpが低い(Ipの立上がり)部分で交差する、夫々の特性を比較してみました。
そのイメージをグラフにすると下図のようになります。左が(i)、中央が(ii)、右が(iii)です。
スケールは適当に正規化してあります。
交差具合はグラフのように、Ep、Ip、RLを固定にしてEsgで調整しました。
Ep=245V
Ik=57mA
RL=3.5KΩ (計算上の適正RLは 245/53=4.6KΩ)
(i) Ec=-6.7V、 Esg=120V
(ii) Ec=-9.3V、 Esg=140V
(iii) Ec=-11.3V、 Esg=160V
これらが実際にイメージ図のようになっているかどうかは分かりませんが、前後の特性変動から推定しました。
標準5結(UL0%)の歪率特性(1KHz)に加えて、UL10%、20%、30%、40%での特性を測定しました。
(注)出力(W)の測定値(計算?)に誤りがありました(2割以上高めになっていたようです)。
なかなか興味深い結果になりました。内部抵抗の変化をのぞけば、予想どおり5結(UL0%)での(i)タイプは3次歪が小さいです。またUL度を上げると、Ipの立上がりが段々寝ていくので、Esgを変えてRLとの交差具合を変えるのと同等の効果(UL↑ ≒ Esg↓)になっているのが、良くわかります。
UL0%:Esg120V、UL20%:Esg140V、UL30%:Esg160V、が大体似た特性になっていて、これはEpとIpと球その物の特性から決まってしまうのかもしれません(限界?)。
2次歪打消しの実験では計算上の適正値より低めのRLが良いと思って試験しましたので、それを確認してみました。
イメージ図で表すと次のようになります。
Ep=270V
Ik=50mA
RL=3.5KΩ (計算上の適正RLは 270/46=5.9KΩ)
(i) Ec=-7.5V、 Esg=120V
(ii) Ec=-9.7V、 Esg=140V
(iii) Ec=-12.1V、 Esg=160V
こちらも標準5結(UL0%)の歪率特性(1KHz)に加えて、UL10%、20%、30%、40%での特性を測定しました。
(注)出力(W)の測定値(計算?)に誤りがありました(2割以上高めになっていたようです)。
Esg=120V:UL40%は出力が小さくなったので省力しました。適正RLに比べると確かにCL出力は若干多めですが、同時に2次歪がそれ以上に多めです。
なので、比較する限り適正RLよりやや低め程度のRLが良いようです。
他の5極管でも歪率と出力の大きさに差はあるものの、この傾向は同じと考えられます。
後はその時の気分(好み)で、マップ(傾向)の中から最大出力と歪率特性のパターンを選び、2次歪打消しを適度に掛けて仕上げれば調整完了です。
念のため、ドライバTrについても出力20Vp-pの場合の歪率を簡単に測ってみました。
3次歪は、そこそこ小さいので問題ないようです。Trよりゲインは低くなりますが、5極管(例えば6CW5)でもULとEsgの選択次第で2次歪打消し用のドライバとして使えそうです。バイアス(C電源)が共通に使えるので、Trを使うより全体の回路がシンプルになり、検討する価値がありそうです。




